重度歯周病と認知機能低下との間には正の相関関係があり、歯周病の原因菌の1つであるProrphyromonas gingivalis(PG)菌成分がアルツハイマー病(AD)患者の脳内から検出されたことから、歯周病とADとの関連が注目されている。
九州大学大学院と中国・吉林大学の共同研究グループは、歯周病患者の歯周組織およびPG菌を全身投与した中齢マウスの肝臓でアミロイドβ(Aβ)が産生されていることを発見。
両者における炎症誘発およびAβ産生には、蛋白質分解酵素カテプシンBが関与していることが明らかになったとJ Alzheimers Dis(2019年10月1日オンライン版)に報告した。
研究グループは
①歯周病患者の歯周組織ではAβが産生される
②慢性PG菌感染により炎症を呈したマウス肝臓ではマクロファージがAβを産生する
③炎症性マクロファージにおけるAβ産生は、カテプシンB/NF-κBシグナル伝達経路の活性化を介して誘発される
−ことを初めて明らかにした。
カテプシンBは、歯周病に伴うADの誘発および病態進行を遅延させる治療標的となる可能性があると結論。
ADの臨床経過は長期にわたるため、「ADの発症を遅らせる『先制医療』としての歯科医学的アプローチには大きな意義がある。
経口投与が可能なカテプシンB阻害薬の開発に期待したい」と述べている。