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日時:令和2年2月9日開催
会場:東京・御茶ノ水のソラシティ
【抄録】
32歳で芥川賞作家となった遠藤周作は、38歳のときに肺結核の手術で片肺を失い、その後も糖尿病、肝臓病などに苦しめられ、73歳で亡くなるまでの後半生を病気と共に生きた。
「お医者さんが医療のプロなら、私は患者のプロです」という遠藤は、1982年の『中央公論』7月号に寄稿した『日本の「良医」に訴える』の中で、6つの願いを示している。
- 病気の背景にある、患者の人生を考えてほしい。
- 患者は普通の心理状態にないことを知ってほしい。
- 無意味な屈辱や苦痛を患者に与えてくださるな。
- 患者の心理をもっと考慮してほしい。
- 患者の家族の宿泊所や休息所がほしい。
- 心療科の医師をスタッフに加えてほしい。
幾度もの長く苦しい入院生活を体験した遠藤は、患者の孤独と不安を癒す「心あたたかな病院(医療)」の実現を誰よりも強く希った。
また、突然目の前にあらわれた病気や入院生活は、患者の病気治療や術後恢復の場であると同時に、それまでの人生を振り返る場でもあると考えた遠藤は、「病院はチャペルである」ということばを遺している。
やはり1982年、病院や介護施設で患者の嘆きや苦しみを聴く活動を行う〈遠藤ボランティアグループ〉が結成され、現在も首都圏9つの医療・介護施設でのボランティア活動を続けている。
発足当時、健康雑誌の編集者で遠藤周作番記者だった私はいま、同グループの代表を務めている。
遠藤の没後24年、「心あたたかな医療」キャンペーンが38年目を迎えたいま、患者のプロ・遠藤が『日本の「良医」に訴える』で示した「6つの願い」は、はたして実現されているだろうか?
「6つの願い」を検証しながら、今後の課題について考えてみたい。
原山建郎氏
健康ジャーナリスト、遠藤ボランティアグループ代表